学力

小学生の中学入試が一段落し、いよいよ高校入試が始まった。もうすでに合格をもらった人もいれば今まさに試験を受けている人がいる。今年はコロナの影響で恒例行事の入試応援ができない。入試応援の時は、早朝から学校に行き、受験会場へ向かう生徒たちと握手をしたりする。意外と効果があるらしい。緊張がほぐれるだとか。こちらは凍えそうな手を何とか温めて握手をする。知らない生徒でも積極的に握手を求めてくる者や嫌々やっている者もいる。どちらにしろ頑張ってほしい気持ちは変わらない。少しでも緊張のほぐれになるような手助けができればなと思っている。

 

今年は代わりに動画での激励メッセージをオンラインで配信している。朝家を出る前にみてくださいとのこと。自分以外の講師はホワイトボードの前に立って熱のあるトークをしているなか、自分一人だけ個室で座って落ち着いて話している。後日ある生徒から聞いた話だが、僕の家で撮影しているかと思ったらしい。異端児すぎる。意外とこの動画配信型の激励メッセージも好評だった。3回連続で見たという生徒もいた。早く会場に行けと思った。まあそれでも見てくれるだけありがたい。

 

さて、本題の「学力」ですが、自分が思い至った結論が「学力」は「読解力」だということです。どういうことか詳しく説明していきます。

 

つい先日新しく小学6年生の国語の授業を受け持つことになりました。まったく新しいクラスで、最も下のレベルのクラスです。彼らの多くはかれこれ1年以上塾に通い、勉強してきたにもかかわらずなかなか成績を上げることのできなかった生徒です。彼ら曰、勉強してもなかなか成績が上がらないことを受け入れてしまっている節があります。その原因はそもそも勉強のやり方が間違っていたのか。それとも別の要因があるのか。初めての授業ではその真相を追求するべく彼らとの対話で授業時間の100分間を費やすことになりました。

 

幸いにもこのクラスには塾が嫌いで無理やり行かされているという悲惨な状況の生徒はいませんでした。とりあえず一安心です。そして意外と勉強が好きだという。勉強が好きなら成績は順調に上がっていくと考えるのは早計です。現実はそんなに甘くありません。彼らには共通点があります。それがいつまでも下のクラスでくすぶっている原因だという結論になりました。それは集中力でもなければ、授業態度でもありません。それは根本的な部分、つまり意識です。これが欠如していました。

 

僕がこの小6のクラスを担当する前、彼らはただ国語・算数・理科・社会の問題を解き、解説を受ける。教室が騒がしくなると注意され、問題の解き方以外に教えられる内容がなかったそうです。それで成績が上がるのであれば家で一人でやっても勝手に学力は上がります。ましてや学校に通うだけで誰しもが優秀な成績を収めることが出来ます。塾の授業スタイルが彼らを縛っているといっても良いかもしれません。

 

確かに講師のやり方は千差万別です。さらに一人ひとり授業のスタイル、方針はクラスによって違います。しかし、一番下のクラスとなると話は別です。生徒をとにかく机に向かわせて制御することが求められます。それは塾の仕事なのかと思うかもしれませんが、これが現状です。塾側としては、生徒・保護者に対して「勉強している感覚」を持たせることが大切です。授業の内容は二の次にされている場合が多いです。結果的に問題演習に時間を割き、根本的な解決には至りません。「問題演習→解説」この流れを「勉強」と位置づけしています。これでは単なる作業です。得るものと言えば講師がたまに教える小手先のテクニック。それを教えられてとりあえずやった気持ちになるのが関の山です。

 

こんな状態のクラスを新しく持つことになります。課題は山積みです。

 

このクラスの生徒にアンケートを取ったところ、勉強をしているのになかなか成績が上がらないことについて悩んでいるという生徒が大多数だということが分かりました。予想通りです。彼らにはまだ成績を上げるだけの下地が整っていないのです。それこそが「読解力」です。すべての科目に共通することがあります。それはテキストはすべて文章で書かれていること。当たり前だと思われたかもしれませんが、これが意外にも大きな落とし穴です。なぜなら、慣れ親しんだ日本語で書かれている文章を懇切丁寧に読むというのは時間の無駄だと考える人の方が多いです。実際そうでした。

 

彼らは各科目のテキストの文章、特に国語と社会に関して、本文すら正確に読めていませんでした。問題文なんてものはほぼ流し読みです。そんなことで成績が上がる訳がありません。なぜこのようなことになってしまったのかというと、「読解力」を最も効率よく養える国語の授業に原因がありました。細かい話は一旦置いておいて、国語の授業を疎かにしてしまうと、その後に失うものへの影響が大きいです。国語の成績が他の科目の成績に影響を与えているといっても過言ではありません。

 

では、「読解力」を向上させるために何をすればいいのか。それは、「分析」と「精読」です。この二つに共通していることは頭を使うことです。ただ読むだけではありません。文字情報を頭にインプットすることで脳が活性化することはほとんどありません。考えながら読むことによって脳は動きます。簡単に説明すると、「分析」とは設問分析とも言い、何を問われているのかを分析すること。「精読」とは、一文一文を丁寧に、行間を読みながら、文章に使われている単語の意味をも考えながら読むことです。これらを意識するだけで一つの文章に対する理解度は格段に上がります。今まで無意識のまま文章を読んで、問題を解いてきたことにほとんど価値はないということを伝えました。もしもそれが正攻法なのであればこのクラスに古株は一人もいないはずだからです。実際に小4の時からこの下のクラスでくすぶっている生徒が数名います。これを聞いた生徒の様子はまさに目から鱗でした。まさかこんなに響くとは思いもしませんでしたが。

 

このように記念すべき1回目の授業は、授業ではなく生徒の意識改革から始まりました。まだまだ改革は始まったばかりです。今日2回目の授業があります。今日は前回の続きー「精読」文章の読み方ーをゼロからやっていきます。

 

1年間ともに頑張りましょう。